POLA TALKER'S TABLE(ポーラ トーカーズ テーブル)
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POLA TALKER’S MUSEUM

開催されたPOLA TALKER’S MUSEUMの内容をご覧いただけます。

POLA TALKER’S MUSEUM REPORT

12/23(sat)

人がつながる場のデザイン

Speaker 成瀬 友梨さん

今回のスピーカーは成瀬・猪熊建築設計事務所代表の成瀬友梨さんです。当日はお話しを聞くだけでなく、参加者どうしで建築作業の役割について話し合う機会がありました。

冒頭は成瀬さんの生い立ちです。絵が好きなご両親の影響からか、幼いころよりアートへの関心が高く、将来は「ものづくり」に携わる仕事がしたいと思っていたそうです。学ぶならば東京で一流のものをという思いから、現役で東大へ入学。模型を作ったり、絵を描いたりする建築学科を見学した際に、「楽しそう!」と感じたことがきっかけとなり建築を学ぶ道に進みます。その後、友人から依頼されたマンションのリノベーションをきっかけに事務所を設立。事務所は大学時代の知人である猪熊さんと運営しており、今に至ります。なお成瀬・猪熊建築設計事務所は、多くの賞を受賞している注目の新進気鋭企業です。

成瀬さんが仕事する上で心がけていること、それは「人をつなげる」ということ。今回のトークセッションテーマそのものです。それの実例として、キュープラザ二子玉川の建築実績が挙げられました。この場所は昔線路だったこともあり、建物の一部に枕木やレールをモチーフとして取り入れたそうです。土地に根づいた歴史は、地域とのつながりを生み、それが人との親しみを強くすると成瀬さんは考えています。

建築物は私たちの生活に深く根づいているため、普段疑問に思うことは少ないかもしれませんが、建築の仕事はどのような風に行われているのだろう?と疑問に思うことはないでしょうか。今回少しでも「建築をする」ことを体験してほしいという成瀬さんの計らいで、ワークショップが開催されることに。建築する上で重要な作業となるコンセプトの立案を体感しました。

お題は、トークセッションの会場である二子玉川に、建築物を建てるとしたらどんなものを建てる?という内容です。はじめの作業は、二子玉川の悪いイメージの選出です。「名産物がない」「人や車が多く、駅前や店が混雑している」「庶民感覚の店が見つけられない」「夜に気軽に食事を楽しめる場所がない」「休憩スペースがない」など。人気のエリアですが、意外と出てくるものですね。次の作業は、出された意見を軸にしたコンセプト設計です。参加者で考えたコンセプトは、「二子玉川をOFFな空間に」という内容でした。オシャレでハイセンスな店が多いので、ここに来る人たちは気分をONにしないと足を運びにくいのではないだろうか?このような考えに至ったのです。それをOFFにする建物こそが、二子玉川には必要だと。成瀬さんはこれに対して、二子玉川の魅力である自然を生かした空間を作るべきと判断しました。この一連の流れこそが、まさに成瀬さんが日々行う仕事風景の一部であり、建築作業において重要な役割となるのです。

このようなワークショップは、実際の設計過程でも行われているそうです。例えば、オフィス建築などは、社員同士のディスカッションが建築の重要なポイントとなっていきます。生の声として出された意見をまとめる能力は、実は模型や絵を作る能力より求められることなのだと成瀬さんは語ります。イマージネーションの力が必要に思われる建築家の仕事も、このようにリサーチが肝となる作業ということに初めて気づかされました。建築物は固くときには冷たい素材でできていますが、それを作る作業上では「いいものを作ろう」という人の暖かい思いや、歴史に敬意を払うように過去の人を大切にする思い、これから使う人たちへの願いなど、現在だけでなく過去も未来もつながっている創作物となります。
街なかを歩きながら、ふと目に入った建物をじっくりと見てみてください。あなたにも、この人のつながりを感じることができるかもしれません。

speaker

成瀬 友梨さん

成瀬 友梨/建築家

1979 愛知県生まれ
2007 東京大学大学院工学系研究科建築学専攻 博士課程単位取得退学
2007 成瀬・猪熊建築設計事務所共同設立
2010-17 東京大学助教
2017- 成瀬・猪熊建築設計事務所 代表取締役

主な受賞に、第15回ヴェネチア・ビエンナーレ国際建築展 日本館 特別表彰、JID AWARD 2015 大賞、日本建築学会作品選集 新人賞。主な著書に、「シェア空間の設計手法」、「シェアをデザインする」

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